2010年オープンの『ゲストハウスtoco.』。東京にゲストハウスがあまり無い時期に開業し、今では旅人の間で知らない人はいないゲストハウスになっています。築100年の古民家を改装した温もりある空間で、『第二の家』のような安心感があり、旅人やご近所さんに長い間愛されています。Coachの児玉安紀(こだま あき)さん(写真左)とスタッフの長村愛理(おさむら あいり)さん(写真右)に、愛され続けるその”持続性”と"暮らすように働ける職場"について伺いました。ゲストと初詣に行き、一緒にお雑煮を食べる──どんな強みがあるお宿なんでしょうか?長村:スタッフとの距離が近いのが強みなのかな。スタッフに会いに戻ってきてくれる方が多いです。児玉:都心で古民家を維持していることも魅力の一つになっていると思います。海外の方は、日本らしい建物に泊まれることや縁側で何気ない会話をするのを楽しんでくれている。──いわゆる古民家一棟貸しより、ゲスト同士やスタッフさんとの交流があるし、建物に丁寧さやこだわりが感じられます。内側から見てtoco.のどんな部分が好きですか?長村:みんな建物に愛着を持っているところですかね。毎日掃除をしていても、古民家なので掃除が行き届いてないと汚れて見えてしまう。お掃除をしてくれる住み込みのヘルパースタッフにも、まずは建物を好きになってもらいます。児玉:細かいことに気を配れるスタッフが多いのはtoco.魅力であり、好きな部分の一つです。規模が小さくてスタッフの人数も少ないので、一人で働く時間もあります。そうなるとスタッフの人柄がtoco.に表れるというか、スタッフ=toco.になるんです。──自分たちで自分たちの宿を愛しているのが伝わります。ほかの店舗に比べてtoco.のスタッフらしさって何がありますか?長村:Backpackers' Japanのスタッフは、みんな自立して動けるのは変わらない。その中でもtoco.のスタッフは、よりお母さんみたいな雰囲気の方が多いと思います。お客さんも落ち着いていて、自分の時間を楽しみたい方が多い。消灯時間があるのですが、みんなちゃんと静かにしている(笑)──距離感が近くて、ゲストとしてではなく人として仲良くなりそうです。長村:チェックアウトの時にゲストとインスタのアカウントを教え合って、また日本に来るときに連絡してくれたり、逆に私が韓国に行った時に現地を案内してもらったりしました。最近はコロナ前に来ていた海外のゲストがみんな帰ってきてくれて、2〜3年ぶりに「お帰り」って言えるのが嬉しいですね。──規模が小さいからこそ一人一人を覚えていられる。世界中に知り合いができるのは、ここで働く良さですね。児玉:ゲストからしても、他のゲストや日本の常連さんと仲良くなれるのは嬉しいんだと思います。ここでゲスト同士で仲良くなって一緒に遊びに行った経験が楽しかったから、またそういう時間を味わいたいと言って来てくれる。バーの営業が終わったあとにゲストとよく居酒屋やカラオケに行くんですけど、スタッフがついていかなくても近所の人とよく出かけてますね。長村:日本の文化を感じられるのもtoco.ならではかもしれないね。正月は一緒に年越しして神社に初詣に行ったり、お雑煮を作って食べたりする。──それは絶対に嬉しいですね。スタッフが新しい風をうむ──ゲストに継続してきてもらうために何かやっていることはありますか?長村:設備の改善は常に行ないつつ、施策でいうと月に1〜2回イベントを行っています。住み込みのヘルパースタッフは最大3ヶ月で入れ替わるので、在籍中にヘルパーイベントと称したその子達の得意な企画をやってもらったり、地方の子であれば郷土料理を振る舞ったりしてもらっています。児玉:イベントはしていますが、常に新しくなければいけないとは考えていない。状況や時代に合わせて変えられるものは変えていくし、変わらない良さもあるべきと思っています。──続かないゲストハウスもある中で、これだけ長く愛されている理由ってなんなのでしょうか?長村:ゲストハウスがあまり無かった時代からあるので、海外の人の口コミで広がっているのはあるかもしれない。──歴史があるだけでは続かないところもあると思います。ハード面やゲストとの距離感以外に何かありますか? 児玉:ご近所の方や常連さんが結構いらっしゃって、そういう熱狂的なファンみたいな人たちに支えられてるのかも。長村:8年ぶりに来てくれたゲストで、スタッフは誰も知らないけど常連さんは知ってるとかがある。──なるほど。ではその地域の方に愛され続けるとか、コミュニティが持続していくためには何が必要なんでしょうか?長村:気取らなさや、いつでも立ち寄れる空気感なのかな。きっかけは国際交流したいとか近所に引っ越してきたとかが多いですが、空気感を気に入ってくれて来続けてくれる。それこそサードプレイスみたいな、家と職場以外の場所として利用されてる方が多いです。服装が適当だから行けないとか、化粧してないから行けないとかがない。パジャマで来る方もいます(笑)児玉:常連さんに「こういうゲストハウスやバーにたくさん行っているけど、toco.はスタッフが話を聞いてくれるから来続けちゃう」と言ってもらったことがあります。アットホームな雰囲気を生み出してくれているのも常連さんだし、住み込みのヘルパーの子達も可愛がってくれます。長村:スタッフ=toco.という表現がありましたが、スタッフが変わると本当に新しい風が吹く。次に来るヘルパーの子はどんな子なの?って楽しみにしてる常連さんも多いですね。──すごく面白いです。ヘルパーやスタッフが変わることによって常連さんも変わってしまうのかなと思っていたんですけど、むしろ逆で新しいスタッフが定期的に入ってくることを楽しみにしているんですね。帰ってこれる場所を守り続ける──長村さんのご経歴をお伺いしてもいいですか?長村:私は飲食業で働いていました。ただ自分が店舗を管理する立場になると、どうしても勤務時間が長くなっていた。仕事しかしていないと感じて、どういう働き方をしたいか考えたときに『暮らすように働きたい』と思ったんです。もともと海外を旅行するのが好きで、ゲストハウスにはよく泊まっていました。ゲストハウスで働いている人は、暮らしと仕事が近い人が多かったのを思い出して、ここに応募しました。──苦労したことや、これまでの経験で活きたことはありますか?長村:コミュニケーションやメールなどの業務も全て英語なので、慣れるまで少し大変でした。活きている部分でいうと、バーのフードの考案やスタッフの賄い作りですね。──個人として今後やりたいことはありますか?長村:たとえここの会社を辞めても、ずっとtoco.とは関わっていたい。辞めたスタッフがよく帰ってきてくれるので、帰ってこれる場所を守り続ける人になれたらなと。──児玉さんはどんな経緯でBackpackers' Japanに出会ったんですか?児玉:大学から英文科でずっと英語が身近にありました。新卒は英語を全く使わないところだったんですけど、やっぱり自分が勉強してきたことを活かせることがしたいと思って、まず英語を学び直すつもりでワーホリに行きました。日本に帰ったら何をしようか考えていたときに、たまたまこの会社の記事を見つけたんです。新卒で就社した会社ではやりたくないことを仕事だと割り切ってやらなければいけない時間が多かったし、帰宅してからも仕事の勉強で自分の時間がほとんどなかった。人生がもったいないと感じていました。この会社の記事を読んだときに、仕事自体が自分が楽しいと思えることで、自分の経験や英語も活かせるし、生きることと仕事の境目がないのがいいなって思ったんです。──今後toco.はどうなっていく?児玉:大切なのは、そこに在り続けること。新しく生まれ変わりたいみたいなのはあんまりないんですよね。みんなのセカンドホームとして帰って来られる場所を続けていきたい。──toco.で働く良さって何ですか?長村:知り合いが増えていくのは嬉しいです。ヘルパースタッフは地方から来る子も多いので、もうすぐ全部の都道府県に知り合いができるくらい。自分の時間もたくさん取れるし、その子達に会いに行くのは楽しみの一つです。児玉:toco.にいると、感動が生まれる瞬間に度々出会えます。ヘルパースタッフが卒業する時やゲストの誕生日など、小さい空間が盛り上がる瞬間を見るとやっててよかったなと思えますね。自分の言葉で、自分のことを話せる人──最近はどんな方が入社しましたか?長村:自分のやりたいことが明確に決まっていて、それを実現するために働きたいという方でした。英語はあまり話せないし、宿泊業で働いたこともなかったけれど、自分をしっかりと持っているのを感じました。児玉:私もそうですけど、サポートすることや応援することが好きな人でも大丈夫。私が過去にやったことって、補助金の申請だったりみんながやってくれるイベントの細かい調整や後処理などが多い。自分が主役になるような働き方じゃなくても「役に立てるのが嬉しいです」って自分の言葉で言える子であればきっと楽しめる。──逆にどんな人は合わないですか?児玉:人数も少ないので、誰かがやってくれるだろうというマインドの人だと難しいかなと思います。──これまで働いていた方はどんな人が多いですか?長村:英語を使う環境にいたいという方は多いですね。児玉:将来ゲストハウスを作りたい方もいます。実際にここで働いて、その後自分で作られた方でいうとマスヤゲストハウスさんとか。元ヘルパースタッフだと他にもいるんですけど、常連さんの方がよく知っていて教えてくれます(笑)──ゲストハウスの経営を学べる環境にあるんですね。長村:やりたかったら何でもできると思います。経営面の数字はすべてオープンになっていますし、集客や広報なんかも役員の方でそれぞれ得意な人がいるので学べる。デザイン・ブランディング・フード・経理など、スキルやキャリアパスに繋がる部分も学んでいけると思います。──宿だけを運営しているわけじゃないし、会社としても整っていていていろんな部分を学べると。長村:他の会社さんと比べて社長や経営陣とスタッフの距離感がとても近い。店舗で働いてるスタッフが気軽に話しかけれるような空気を作ってくれています。──Nui.に行った時に、代表の藤城さんがスタッフに混じってチェックイン業務していてびっくりしました(笑)児玉:そうですよね(笑)いろんな店舗に手伝いに来ているし、仕事が終わった後も店舗で飲んでるから話しかけやすいですね。文章・編集:田中拓海写真:田中拓海