大正大学 地域創生学部。数週間にわたる長期の「地域実習」[1] を必修科目として実施するのが大きな特徴で、地方創生をリードする人材の輩出をめざしています。同学部の強みや学生の特徴、そして、地方創生に必要なことはどのようなことか。地域創生学部の福島真司教授と、4年生の小野涼太さんに伺ってきました。[1] 2020年度以降はコロナ禍の影響で、各地域と協議しながら現地での活動期間を決定して実施しています。地域創生に資する人材を育成したい──何を学べる学部なんでしょうか?福島:『地域創生に資する人材を育成する』という目的のもと、地域に寄り添い、地域を支えるリーダー人材の育成をめざしています。「地域実習」は本学部の看板科目ですが、他に類を見ない長期の実習です。そこではまず各地域にある魅力の徹底的な掘り起こしを行います。そこから得た感性は、例えば、東京にいる地方出身の学生から「うちの田舎は何もないから…」なんていう台詞を聞いた際には、「いやいや、そんなこと絶対にないから」「きっと素晴らしい魅力があるはずだから」と本気で突っ込んでいくような姿勢を生み出します。一見して、目立たないところや、気付かないような小さいものに本当の面白さや魅力があることを、実習を通して肌感覚で学ぶわけです。その姿勢は、例えば、就活で大企業と中小企業どちらかを選ぶ際にも、一般的には、大きい方に寄っていく方がチャンスがあるのは当たり前だと思うのでしょうが、それが必ずしも正解だと思わず、一度立ち止まって色々な角度から考えて、自分に本当に合う場所、サイズの大小だけではない自分にとっての本質的な魅力ある場所を探す姿勢にもつながっています。──立ち止まって考える力を身につけるというのは良いですね。地域創生という文脈では、どんなことが学べますか?福島:学生は本当にいろいろなことを学びますが、その中で大切な考えの一つに、いわゆる組織リーダーと地域リーダーの違いがあります。地域は、年齢とか仕事とか考え方とか、それぞれ異なる人たちが集まっているコミュニティです。ピラミッド構造でもないですし、意思決定の序列が決まっているわけでもないので、組織みたいにはリードできない。大企業で活躍してリタイヤされた方が数十年ぶりに地元に帰って、町おこしなどで旗を振るけれど、企業のような組織のやり方では地域の人は誰もついてこずに喧嘩別れになるようなことってありますよね。これは本人の認識の問題でもあり、事前のトレーニングで防げる部分も多い。地域とはどういうものなのかを考えたり、多数派の意見に反対する人たちへの寄り添い方だったり、時間の掛け方だったり、そういう肌感覚を長期の実習をとおして掴んでいきます。ただし、教科書的な正解があるわけではなく、自分のできるやり方でどう地域にアジャストするのか、そういう粘り強い姿勢を学ぶわけです。「地域実習」とは──「地域実習」とはどんな制度で、具体的にどんなことをするんですか?小野:学部の生徒がグループに分かれて、大学の連携自治体が現在108箇所ある中の15地域にそれぞれ入っていく。地域の実際の活動に参加して、リアルを学んでいきます。私の地域実習の期間は大体40日間でしたので、しっかりと地域の内側に入り込むことができました。1〜2週間行ってすぐ課題解決〜プレゼンテーションといった感じではないです。いろんな学生がいろんな地域で実習してくるので、追体験もできます。私の班は関係人口がテーマで、どうやったら関係人口が生まれるのかを考えていきました。地域外の人を対象としたイベントを企画したり、地域の方と一緒に観光のイベントに参加したりしました。──長い期間なので、地域の人も接し方が変わりそうですね。実習を通して、何を学べましたか?小野:コミュニティの在り方ですかね。続けられるかどうかって、やっぱり楽しいかどうかが大切。自分たちが楽しくできるために、入りやすい雰囲気や人を責めない空気感が大事になってくる。あとは単純に自分の知らないところに行けたり、色々な街を知れたっていうのは良かったです。他の班が発信していた面白い取り組みを、地元でやったらどうなるんだろうって考えるきっかけになりました。──他の班でどんな取り組みがありましたか?小野:地方の特産品を販売するオンラインマルシェをやっていたところがありました。学生が動画を制作したりチラシをデザインから考えたり、スキルを身につけられる取り組みをしていましたね。──ビジネス寄りなことも学べるのはいいですね。小野:そうですね。大学にもガモールマルシェというアンテナショップがあります。そこでは日本各地の特産品などを販売しています。一部の商品は、地域実習で知り合った農家の方や企業から学生が商品を仕入れしています。また、学生はアルバイトとして店舗の運営や売り方などを学ぶことができます。地方では経済合理性より熱量が勝る──地域創生のアプローチの1つとして、宿泊施設を作る方も多いと思います。そういった学生もいますか?福島:興味がある学生や研究対象にする学生は一定数はいますが、実際にプレイヤーとして実現するには、初期コストの面で少しハードルが高い印象ですね。やや似たようなアプローチだと、実現可能性の高いコミュニティカフェなどをやってみる学生は多いです。もちろんその延長線上で、ゲストハウスなどにチャレンジする学生もいますが。──就職先としては地方へ行かれる方が多いですか?福島:年度にもよりますが、全体の中で、地方の割合は3割程度です。ただし、都市圏にいても地方に関わる仕事を選ぶ学生を加えると5割を越えます。例えば、東京に本社のある大手警備会社に就職した卒業生がいますが、そこは自社の特長を活かし、行政と組んで地方の高齢者の見守りサービスをやってるんですよ。IoTの技術を使って、おじいちゃんおばあちゃんが元気に暮らしているかどうかを自動で判別し、問題を察知すれば駆けつける。そのサービスに関心が高くて、そこに就職した。地域の課題を解決するという軸で、会社を選んでいる学生がやはり多いですね。──地方に行く人たちはどんな人ですか?福島:自分自身の地元以外に飛び込んでいく学生は、まあ良い意味で変人が多いですよね(笑)ユニークな例ですけど、学生の時からずっと銭湯をやりたいっていう東京出身の学生がいて、銭湯で地域コミュニティを活性化したいと、どうしても銭湯でないとダメなのだと譲らない。教員としては、正直言ってあまりおすすめできなかった。地域には、経営的に銭湯が成り立たなくなる事情があるわけで、もうそういった生活様式や文化が残ってないとか、損益分岐点を超える利用者がいないとか、明確な理由があります。本人は、それでもやりたいと延々と周囲に言い続けた結果、宮城県登米市で地域おこし協力隊をやりながら、地元の木材を使って、地元の大工さんに頼み込んで、移動式サウナを作ったんですよ。YouTubeで集まってくる地域の方の笑顔を見たらもう参りました。私が間違っていたと本人には深くお詫びしました(笑)──経済合理性より熱量が勝ったと(笑)福島:「やってなんぼの世界だ」って我々も授業中に言ってるわけですけど、相談されれば「もうちょっと現実的に考えてみろ」って、つい言ってしまう。そういう教員は地域創生には必要ないかもしれないですね(笑)大学で学んだことを仕事に活かす──小野さんは、どんなところに就職するんですか?小野:島根県の益田市にある、一般社団法人豊かな暮らしラボラトリーという会社に就職します。教育事業がメインで、大人から子供まで地域の人と対話していく仕事になります。益田市は地元なのでUターンになるわけですが、『過疎発祥の地』と呼ばれてるんです。人の減少を止めるのはなかなか難しいので、一度出て行った人たちが戻ってくるきっかけを作っていけたらと考えています。──実際にどんな活動をしていく予定ですか?小野:今年に入って東京に益田市の活動拠点ができたので、すでに最初のイベントを企画しています。自分も学生生活を通して島根県出身のコミュニティに参加していましたが、すごく安心できてよかったんです。県外にいても益田市と関われるコミュニティを作って、輪を広げていければと考えています。──企画からコミュニティ運営の仕方まで、しっかりと大学で学んだことを実践していて素敵です。大学詳細ページはこちら文章・編集:田中拓海写真:田中拓海