ゲストハウス『ゲストハウス品川宿』やスモールラグジュアリーホテル『PETALS TOKYO』を受託運営する宿場JAPAN。複数の宿の運営、街づくりと収益化、スモールラグジュアリーホテルの展開、それぞれやる理由が明確にあり、街の人から愛されている会社です。 今回は代表の渡邊崇志(わたなべ たかゆき)さんに、事業立ち上げの思いや業界課題の解決についてお伺いしました。街から愛されるだけでなく、必要とされる会社の特徴が見える記事となっています。どうぞお楽しみください。他には無いゲストハウスの魅力──様々な宿泊施設がある中で、ゲストハウスの魅力はなんでしょうか?お客さんとの距離感が圧倒的に近いことだと思います。コミュニケーションがカジュアルで、スタッフの情報開示レベルも高い。個人でSNSアカウントをどんどん交換して、人として仲良くなっていきます。素泊まりなので、スタッフの紹介を通してお客さんがご近所のお店と仲良くなっていくのも嬉しいですね。──仕事内容にはどんな違いがありますか?基本的な宿泊の仕事はそんなに変わらないけれど、人の顔を見せて発信する働き方はゲストハウスならではです。お客さんもそうだし、地域のお店も”人”単位で紹介していく。生活しながらボランティアしたり地域の祭りを手伝ったりすると、地域に何があるかわかってくる。その中からお客さんの関心のある事柄をうまく提供していくことが、ゲストハウスの魅力であり強みだと思っています。──働き方から違ってきそうですね。そうですね。生活していく中で仲良くなると、仕事でも繋がる。シームレスな感じで、仕事と生活が混ざっていく感じですね。──ゲストハウスの運営に関して、売上以外の”社会的役割”があると発信されている記事を見ました。具体的にどんな役割があるのでしょうか?ゲストハウスはお困り事が集まりやすい場です。ウェルカムゲートみたいなゲストハウスがあって、地域のお店が集うコミュニティがあって、お客さんがいる。このトライアングルで地域・観光が成り立っていて、お客さんが最初に来るのが宿なんです。まずお困りごとをキャッチできるのがポイントだと思っています。お客さんの気分によって、その日の朝に生まれるニーズがあるかもしれない。それに対して、地域の中で解決できるものを当てていく。逆に地域からのお困り事も聞こえてきます。例えば空き家が増えちゃったとか祭りが続かないといった声が集まってくるので若い担い手を集めたり、宿への宿泊がきっかけで移住が行われたこともあります。地域のお困りごとのキャッチアップや解決を担っていくのが、社会的な役割の一端なんじゃないかなと思っています。──実際の解決事例は何かありますか? 使われていないスタジアムを使ったツーリズム造成や、お寺の瞑想体験を旅行商品として作ったこともあります。つい最近は3年ぶりにお祭りが再開したので、ボランティアの人やリピーターの方々と参加したら予想していたよりも多く集まりました。地域の魅力をブラッシュアップして、しっかりと情報発信すると意外に集まることが多い。会社として宿泊業だけをやっているわけではなくて、地域の課題を解決する仕事も3割くらいあります。宿を続けることで行政から仕事をいただいて、街にとって必要不可欠な存在になっていると感じます。──そういうコンテンツに参加できることやコミュニティに入れることも、宿の魅力になっていそうですね。“地域融合型”のゲストハウス──運営している『ゲストハウス品川宿』でいえば、お客さんはどんなことを求めて来てくれますか?アクセスの良さや、下町ならではの雰囲気を求めてきてくれる方が多いですね。ただ最終的には地域の魅力です。近隣の飲食店も個々に盛り上げる努力をしていて、街のパワーがある。そういった方々を繋いだり、東京で顔が見える接客をすることで選んでもらえているのかなと思います。──会社で他にも宿を運営しているかと思います。会社として作りたいゲストハウスの形について教えてください。“地域融合型”のゲストハウスを作り、ずっと続けていきたいと考えています。特徴は3つあって、1つは小さい宿ならではのマルチタスク。一人一人が自分事として、いろんなセクションに携わっています。ただ部屋を綺麗にするだけの人がいるのではなく、1人がチェックイン・チェックアウトから清掃までする。「こんな方がこういう使い方だったから次回来た時にこんな対応ができるね」といって、情報を管理できるのでお客さんの満足度を上げていけます。2つ目は、固有名詞で紹介すること。なにかを探してる時に「○○さんのお店にあるよ!」みたいな、人と人を直接つなぐことができます。3つ目は、攻めのコミュニケーション。駄目でもいいからとりあえず話してみて、少しおせっかい気味な対応をする。それには地域を愛する姿勢が大切で、なぜかというとお客さんに案内する時に自分がどのくらい地域が好きか見えてくるから。3つの要素が複合的にいい宿作っていて、1つでも欠けると繁盛宿だけど地域で孤立してしまったりする。──地域の人達と一緒にもてなすことによって、お客さんの満足度が高まりそうですね。そうですね。外資系の高級ホテルでも、地元のお店を紹介してほしい時に食べログで調べた情報を教えてくれる人がいるじゃないですか?それは誰でもできることであって、旅行者が知りたいのは、「あなた達は何を食べるの?」「どうしてそこに行きたくなるの?」という部分なんです。”○○さんがいるお店”を紹介することで、地域の人と顔で繋がってリピートの角度が上がる。──リピーター率は高いですか?リピーター率も自社予約率も高いですね。月によって変動はありますが、コロナ前でリピート率90%近い日はよくありました。ゲストハウスの課題を解決する宿づくり──ゲストハウス業界の課題はどんなものがありますか?課題の1つは、収益性だと思います。ゲストハウスたるもの安くなければならないという価値観を基に、デフレの時代に日本の人も楽しめる価格設定を取り過ぎてしまった。雇用が生まれるか生まれないかのギリギリのラインにあります。宿場JAPANであれば、街づくり事業でお困りごとの解決に対してお金をいただいている部分があります。2つめの課題は人材育成。収益性の問題があって雇用が生まれないと、街づくりや人づくりも難しくなってしまう。働いている人が充実したライフステージを重ねていけるところまで、お客さんに負担させ過ぎずにどう利益率をあげていくか考えないといけない。──働いているスタッフの年齢が上がっていくにつれて雇用の問題もあるし、ゲストハウスの利用者との年齢的のギャップもうまれてきますよね。そうですね。そういった働く側のライフステージとお客さんのライフステージに合わせた宿泊施設を作りたい考えもあって、スモールラグジュアリーホテルを受託運営しています。小さな宿なのでマルチタスクは共通していますし、ゲストハウスよりも高い単価をいただける。収益性とライフステージの視点では、課題解決に直結しているかなと思っています。──お客さんの単価も上がって賃金も上がるし、スキル面での人材育成もできる。ライフステージに合ったゲストを接客できる。一つの会社でやる意味があって、素晴らしいと思います。ゲストハウスとスモールラグジュアリーホテルは規模は近いですが、単価と客層は違うと思います。接客は同じ人がやっていけるのでしょうか?私やマネージャーは高価格帯ホテルの経験があり、接客やサーブは教えられることがあります。外部の方の協力もありながらオペレーションを構築した部分もあって、お客様には満足していただけているかと思います。スキル以上に、満足の上の感動を満たせているかという考え方が重要だと思っています。10段階評価で満足が8だとしたら感動は9〜10くらい。感動してくれた人はリピートしてくれるし、友達にも言ってくれる。年齢や旅行の目的など、実際のゲストを想定してよくロールプレイをしています。スタッフ数名でアクションをつないでいって、どんなポイントで感動させれるか考えていきます。──会社のキャリアパスとしても、ゲストハウスからスモールラグジュアリーホテルを勧めていく?もちろんそのキャリアパスもありますが、全員が同じように進むわけではないです。最近、地域の課題解決は日々のループだと分かったんですよ。『街づくり』って言葉自体が100年後も200年後もあろうとするプロセスを指していて、ゴールはない。地域の課題解決の方法がゲストハウスやスモールラグジュアリーホテル、旅行商品の造成なだけ。これを日本全国や世界規模で追っかけていて、その専門性が個人のキャリアになるんじゃないかな。──なるほど。会社の中のキャリアパスというより、街づくりの専門家集団を目指しているんですね。宿の広間が街につながっている──そもそもどんな思いで宿の運営を始めたんでしょうか?海外に行っていろんな場所でいろんな友達ができた時に、当時日本にはそういう場が少ないと感じたんです。町会や商店街、お祭りの会などはいきなり参加できなかったですし、インドタウンやチャイナタウンといった独立した組織体がいっぱいできてもしょうがない。お祭りや地域コミュニティの団結が無くなっていくのが、すごくもったいなかった。そこで宿の共有スペースで仲良くなった人達が、地域のお祭りに一緒に参加して、半歩外にコミュニティを作って融合していけたらと思って宿を始めました。──外部の人達が、地域の中に入り込むための入り口を作っているイメージですか?そうです、その基盤作りをしています。今の町会長が、宿場JAPANが出来たことによって「外国人が来てくれたことよりも、外国人をもてなす若者が来てくれたことが一番嬉しいんだ」と言ってくれたことがありました。神戸や長野など他の地域でも形になってきているので、もっと広げていければと思っています。──祭りや文化を残すためには担い手だけじゃなくて新しい風が必要で、品川のアート文化も含めて新しい文化ができていきそうですね。採用する方の共通点はありますか?心の誠実さですね、自然とにじみ出ている人が多い。お客さんは鏡なんです。こちらが怪しんでると怪しまれるし、よくしようと思えばよくしてくれる。お客さんに向かっていく時の姿勢で、人となりがわかるんです。──会社・職場の魅力はどんなことが挙げられますか?開業志望の方にとっては、地域づくりと宿運営のバランスを取りながら持続可能なやり方をしている数少ないケースかなと思います。会社としては、年々新しいことをやる風土があるので、自分の意見が形になることもあって、当事者感を感じられるサイズだと思いますね。逆に変化を面白がれないと少しきついかもしれない。日々変わっていくことを誇らしげに言えるぐらいの人がいいと思います。──一般的な街づくりの会社って、建物を作って終わりが多い。これだけ地域の中に入ってちゃんと課題解決をしているのは他にはないし、それを会社として利益を出しているのもすごいと思います。どんな方に応募してほしいですか?新しいことをナチュラルにこなしていく人がいい。スキルや経験ではなくて、そういう感性。YouTubeやSNSの運用をやっていたり、仕事で使わないかもだけど面白そうなのでchatGPT触ってますとか。それを情報発信や仕事だと思ってやっていない人が強い。まちづくりはいろんな仕事があるので、そういったことを面白がれる人の方が合うと思います。文章・編集:田中拓海写真:田中拓海hoteltree(ホテルツリー)は、働きたいホテルが見つかる求人サイトです。宿泊業界の離職率は約30%。入社する理由と、続けられる理由は異なると考えています。続けられる理由まで考え、ホテル業界の取り組みや支配人の想いを紹介していきます。ミスマッチを減らすことを目的に、誠実なホテルと宿泊業を志す人々、それぞれに真摯に向き合っていきます。