宿泊施設の運営や街のお困りごとを解決する会社「宿場JAPAN」。同社初めてのスモールラグジュアリーホテルとして、2020年東京・天王洲に出来たのが「PETALS TOKYO」です。水上アートホテルという珍しいコンセプトで運営しながら、街との関係性を活かしてお客さんを楽しませています。今回はマネージャーの中村公紀(なかむら きみのり)さんに、スモールラグジュアリーホテルの魅力や、中村さんのホテリエとしての歩みについてお伺いしました。街とアートを駆使したホテル作り──ホテルのコンセプトや強みをお伺いしてもいいですか?日本で唯一、本物の停泊船を宿泊施設として利用しているホテルです。ここ品川の天王洲エリアはアートを駆使して街の活性化をしていて、PETALS TOKYOの室内にもアートを飾っていたり、アート展とのコラボプランも販売しています。また、4部屋のみのホテルなので、きめ細やかな接客が出来ているのも喜んでいただいている理由の1つかなと思います。──PETALS TOKYOはスモールラグジュアリーホテルに分類されるかと思います。どんな目的でくる方が多いですか?記念日でご利用される方は多いですね。他にも、普段は高層階に泊まられている方が逆に水辺の近くに泊まってみるとか、近隣の方が非日常感を味わいたくて宿泊されることもあります。──マネージャーとして、どんな運営をしていますか?施設オーナーからの委託事業として宿場JAPANが受託運営をしています。施設オーナーさんが主に集客施策やレベニューの管理をしつつ、僕らがお客様の満足度管理やイベントと連動したプランの造成などを行っています。街がアートを軸に盛り上がってきているので、街全体を使った取り組みができるのは面白いポイントです。水上タクシーを利用したり、エリアの特徴であるアートやワインといった強みをプランに組み込んだりしています。お部屋以外の部分で、いかにお客様の満足度を上げていくかが課題であり楽しみな部分でもありますね。──品川・天王洲の街にはどんな魅力がありますか?品川はオフィス街のイメージが強いですが、いろんな顔を持っているのが面白いところだと思います。PETALS TOKYOのある天王洲はアートやまちづくりが盛んですし、僕たちのゲストハウスがある北品川は、情緒豊かな下町で、お祭りが行われます。──確かに実際に来てみてイメージとの違いに驚きました。住んでみて分かった魅力とかもありますか?地域の繋がりは大きいなと感じますね。東京に住んでると、なかなか近隣とのつながりやコミュニティを感じることがない。だけどここは人と人との繋がりがしっかりあって、個人的にお世話になったり、仕事に繋がる出会いもあります。スモールラグジュアリーホテルで働く魅力──スモールラグジュアリーホテルで働くやりがいや魅力はどんなものがありますか?大規模なホテルに比べてお客さんのニーズに深く応えてあげられますし、お客さんが求めてることを感じ取って、逆に提案することも多いです。お客さんと仲良くなり、喜んで帰っていただけることがスモールラグジュアリーの醍醐味かなと思っています。──日本にもだんだんとスモールラグジュアリーが増えていますし、魅力が広まっていったらいいですよね。最近はどんなことで喜んでいただけましたか?最近はプロポーズのお手伝いをさせていただきました。水上ホテルの特徴を活かして、カップルがクルーズに乗って客室の前まで来ると、こちらでカーテンをあけてプロポーズの言葉が現れる演出をしました。お客様との事前の打ち合わせを通して関係性が生まれましたし、お客様の細かい希望までお応えできるのはこちらとしても嬉しかったです。──スモールラグジュアリーホテルに宿泊されるお客様の特徴は何かありますか?プライベートな空間を楽しみにしている方は多いです。あまり踏み込まない接客は意識しつつ、会話の中からニーズを引き出していきます。──一般的な高級ホテルに比べて、クレームの数が少なそうですよね。圧倒的に少ないと思います。他の会社さんとの連携ミスでお客様にご迷惑をおかけしてしまって、一度だけクレームをいただきました。嬉しい反面、心配になる部分でもあります。直接いただけるお声やアンケートに書くまでもない小さなストレスが、ホテル改善のヒントになるんです。田植えからオペレーション構築までこなす──中村さんのご経歴をお伺いしてもいいですか?出身は東京の墨田区で、大学の卒業旅行で屋久島に行ってから、島の魅力に取り憑かれました。島の自由さが自分に合っていると思えたし、そこで働いている人たちがかっこよく見えたんです。まずは小笠原諸島のお宿で働き始めて、お金が貯まったら別の島へ行って宿で働くという生活をしていました。──憧れる生活ですね。宿の運営まで携わるようになったタイミングはいつ頃ですか?香川県・小豆島の隣の小さな島で、アートに関するお宿の運営に携わりました。瀬戸内国際芸術祭の作品となったホテルで、デザイナーの方がディレクションされていて素敵な空間でした。ただ、一棟貸しの宿を1人で二つ運営する体制だったのでかなり鍛えられました。ホテル名に田がついており、田んぼがコンセプトの宿でもあったので、島民の方たちに協力をしていただきながら開墾から始めました(笑)──えぇ…… 1人で回せるんですか?船の時間は決まっていてコントロールはしやすい部分はあったものの、朝は田んぼの管理をして、昼は清掃とチェックイン、夜はレストランでサーブするという生活をしていました。オペレーションの構築も自分で作るしかなかった。1つは潰れていた宿だったので、以前運営していた時の紙のマニュアルを引っ張り出して、島の人に聞き込みをして作りました。もう1つの宿は新しくオープンしたので、片方の宿のオペレーションをラグジュアリーに構築し直して運営していました。──壮絶ですね……島暮らしからホテルの立ち上げへ──貴重な経験をされてきたとのことですが、今までの経験はPETALS TOKYOの立ち上げにどう活きましたか?飲食のサーブやアート作品の説明は、島で働いていた時に経験していたので難しくなかったです。あとは価格帯に応じたお客様の傾向を掴めていたのは大きかったと思います。この価格帯ではどんなお客様が多くて、どういうことに気をつけないといけないか、感覚でわかる。船という特殊な環境なので風や波の対応が難しいんですけど、そこでも島にいた時の経験が活きています(笑)どのくらいの風の強さや波の大きさで船が止まるか、感覚が養われていました。台風の時のお客様のケアやフォローの仕方は、すぐに対応できましたね。──面白いですね(笑)オペレーションの構築も今までの経験が活きましたか?そうですね。経験もそうですけど、小さい規模のホテルを1人で運営したことで視座が上がったと感じています。現場だけじゃなくて全体が見えるようになりました。自身の経験を活かしつつ、ラグジュアリー施設の視察や、外部の支配人の方に教えていただいたこともあって、良い形で構築・運用できているかと思います。 ──逆に難しかったことや、大きく学べたことは何かありますか?天王洲エリアでの関係性はそこまで無くて、初めての方々とのコミュニケーションは大変でした。実際に泊まってくれたお客様のお声や、喜んでいる姿を見ていただいて、関係性が深まっていったかなと思います。──立ち上げを経験した上で、今後の個人的な目標があればお伺いしてもいいですか?自分はスモールラグジュアリーホテルで働くのが合ってるなと感じます。前職から感じているのは、お客様の顔が見えて、一人一人に寄り添ってサービスをカスタムしていくのはすごく楽しいということ。立ち上げの経験や接客のノウハウを活かして、スモールラグジュアリーに関わる仕事を続けていきたいと思っています。この会社以上にお客様のことを考えているとこはない──チームにはどんな人達が集まっていますか?気がいい人が多いですね。どこの施設も人間関係は苦労されているかと思いますが、ここで4年働いていて苦労したことは一回もないです。──お話していて人の良さを感じます!宿場JAPANらしいカルチャーはありますか?代表の渡邊の性格が、そのままカルチャーになっている感じです(笑)みんな渡邊に引っ張られている。渡邊がアーリアダプターなので、新しいものを探してすぐに取り入れる。スピード感がある状態で、お客さんに喜んでもらえるまで落とし込めるのは横で見ていてもすごいものがあります。変化が大きい分、柔軟性は大切だと思います。サービス業で働いていた方でも、マルチに色々動いていた方が上手くやれているかなと思います。──今までの離職者はどんな理由で辞められましたか?少人数で運営しているので、シフトはお客さんに左右されてしまう部分があります。ある程度大きい会社にいてルーティンワークをメインに働いていた方で、フレキシブルさに慣れることが出来なかったケースがありました。──採用で解決できそうな部分ですね。そうですね。繁忙期になると特に人手が足りなくなります。4室とはいえスモールラグジュアリーホテルなので、僕たちがやりたいのはお客さん一人一人にフォーカスしたサービスです。スタッフが1室につき、しっかりお客様のニーズを満たしていきたい。それで単価も上げていけたら、理想ですね。──最後に、会社の推しポイントがあれば!僕が宿場JAPANに来てまず思ったのは、この会社以上にお客様のことを考えているとこはないんじゃないかってこと。お客様の喜びのさらに上の感動に向かって、みんなが一心不乱に考えて仕事をしている。宿泊業に限らず、どんな仕事に対しても大切なことを学べると思います。文章・編集:田中拓海写真:田中拓海hoteltree(ホテルツリー)は、働きたいホテルが見つかる求人サイトです。宿泊業界の離職率は約30%。入社する理由と、続けられる理由は異なると考えています。続けられる理由まで考え、ホテル業界の取り組みや支配人の想いを紹介していきます。ミスマッチを減らすことを目的に、誠実なホテルと宿泊業を志す人々、それぞれに真摯に向き合っていきます。