ホテル事業、ウェディング事業、レストラン事業を展開する株式会社Plan・Do・See。人通りの少ないエリアにレストランを出すことで人の往来が10倍になるなど、その街の価値が上がるお店づくりを得意としています。ホテルは全国に7店舗あり、伊豆のおちあいろうや京都の丸福樓など、こだわりのつまったホテルを運営しています。今回は、東京・青山にある『THE AOYAMA GRAND HOTEL』の宿泊支配人 由喜門 貴紀(ゆきもん たかき)さんに、ホテル運営やマネジメント、採用に対するこだわりについてお伺いしました。街の価値を上げるホテルづくり──最近、Plan・Do・Seeで『PDS HOTELS』というホテルブランドを出しているのを見ました。どういった意図があるのでしょうか?Plan・Do・Seeは、その土地に根ざしたホテルや街の背景を反映したホテルを運営してきました。なので一つとして同じホテルやお店が無いのが特徴です。ただここ2〜3年でホテルの数も増えているので、ブランドを1つにしてお客様のロイヤリティ価値を上げていこうと考えています。海外のお客様に日本各地にあるPlan・Do・Seeのホテルを知ってもらったり、顧客情報を統一することでお客様に対してさらに価値を提供できればと思っています。──確かに宿泊業界に入るとPlan・Do・Seeのホテルはどれも土地の色や歴史を空間に反映させるのがうまいし、上質な雰囲気を纏っているのがわかるけれど、一般の方にとってどんな違いがあるかわからないかもしれないです。働いている目線では、一般的なホテルと何が違いますか?一般的なホテルは、チェーン展開に近い形で型を作って量産していくことが多いです。Plan・Do・Seeのホテルはどこも0から図面を書き起こして、家具のブランドも客室ごとに選んでいる。そこが手間で大変なんですけど、その分思い入れや居心地の良さにつながっているのかなと思っています。──それでしか生まれない空気感や熱量がありそうです。Plan・Do・Seeのホテルが作られたことで、その街の人にとって誇りになったり、街の価値が上がるように考えていると伺ったことがあります。働いていてそういったことを感じたことはありますか?例えば2012年にオープンした6th by ORIENTAL HOTELというレストランがあります。もともと有楽町は銀座側は賑やかなんですけど、逆に6th by ORIENTAL HOTELがある皇居側はお店も人通りも無かったんです。それが6th by ORIENTAL HOTELが出来たことによって、お店がどんどんできて、華やかなエリアになり、時間あたり歩く人の量が10倍以上になりました。地所の方から直接感謝の言葉をいただくことがあって、こういうことが街の価値を上げることなのかなって感じましたね。──数字にも表れていてすごい。良い話ですね。平均4泊、暮らすように泊まるホテル──THE AOYAMA GRAND HOTELは、どんな特徴がありますか?ここは42部屋しかないんですけど、ルームタイプが12タイプあります。どの部屋に泊まってもカーペットの色が違ったり、飾ってるアートも全て違う。1部屋1部屋にこだわりが詰まっているんです。“1970年代東京のミッドセンチュリーモダン”をテーマにしたお部屋作りなので、家具がアルフレックスで統一されていて、ベッドも京都のイワタ寝具という日本のミッドセンチェリーの期間を支えてたブランドの家具を配置しています。そういったこだわりを好んでくれて長期滞在する方が多く、平均で四泊も泊まってくれている。お客様にとって“暮らすように泊まるホテル”として第一に選んでもらっているのかなと思ってます。──平均四泊ってすごい数字ですね。リピーターも多いですか?多いですね、だいたい2割くらい。あとは延泊が多いです。「もう一泊」と10回くらい言ってくれるお客様もいらっしゃいます。──リピート率や泊数といった数字を追いかけて運営しているんですか?基本的にRevPAR(1室あたりの収益額)を追っています。去年の自分達の数字を超えるのを目指している。このホテルはとにかく付帯施設がないんです。プールもサウナもないですし、エステも外注してます。なので、RevPARを上げるうえでとにかくコンテンツを増やすこととサービスのクオリティを上げ続けることを意識しています。例えば客室のグラスは普通は割れないものを選びますが、お客さんが手に触れるものなので日本のいいグラスを入れている。あと僕たちが外国に行く時もそうだと思うんですけど、お水をたくさん買うじゃないですか?そういったお水をたくさん買う手間を無くしてあげるために、水は客室に4本と冷蔵庫の2本入ってます。何より満室にしないことを大切にしています。延泊したいって言われた時にすぐに「ご案内できます」と言えることであったり、海外の方が長いフライトでヘトヘトで来た時に仮にチェックインの時間前だったとしてもすぐにお部屋にご案内できることが価値になる。──稼働率ばかり追いかけるホテルが多い中で、お客様のことを本気で考えているのが伝わって感動すら覚えます。朝食の提供も4階から最上階の20階に変更し、内容はかなりこだわっています。本気で日本一美味しいんじゃないかと思っている。20階で朝食をやるにあたって、東京中の朝食を食べまくりました。どのホテルもとにかく和洋折衷、種類が豊富!みたいなところが多くて、特にこれが美味しいってあんまりなくて。だったら僕らは、とにかく厳選してみようということで、例えばバナナ1個とっても産地から選んだ抜群に美味しいバナナを提供していたりします。──実際に予約サイトの食事のレビューは上がっているんでしょうか?朝食の内容を変えてから数ヶ月たちますが、4.45から4.58まで上がってきていますね。ゲストは何に価値を感じているのか──「サービスのクオリティを上げるために東京中のホテルに足を運ぶ」など、スタッフが自走してコンテンツを作りつづける状態を実現するために、組織や制度として行っていることをお伺いしたいです。Plan・Do・Seeって”Rush to Stay & Dinner”という、ホテルの宿泊代やレストランの食事代を会社が半額負担してくれる制度があります。半分は福利厚生、半分は研修の意味合いがあって、とにかく顧客体験をたくさんします。ホテルの空気感を感じたり、どんなお客様が来てどういう物を頼んでいるのか常にインプットする。カフェでお茶するだけでも勉強になります。要はお客様がどういうものに価値を感じているか考える場が多い。そういった経験から、若いメンバーが言うことも芯をくっていることが多いんです。つい最近だと、入社1年ぐらいのスタッフの提案で、予約サイトのダイヤモンド会員のプランを全部変えました。──うらやましい制度です!ただ制度があってもうまく運用に乗らないこともあると思います、運用に乗るためには何が大切なんですか?一般的なホテルは、スタッフ、フロアリーダー、係長、部長……とたくさん役職が分かれています。Plan・Do・Seeはスタッフ、マネージャー、ゼネラルマネジャーの三つしかないので、裁量や決済の幅が非常に広い。それは大きいんじゃないかなと思います。──若いメンバーも自発的に行動していて、真の会社の強みに人材があるのかなと思います。それで、新卒採用で面接が7回続いたというエピソードを伺ったことがあります。その理由は人の自発性をよく見ているから?新卒の面接回数は人によりますね。平均6回ぐらい。僕が新卒の時は12回の方もいました(笑)私たちが面接で聞いているのは、会社がその人のこと幸せにすることはないから、働く人がその会社で幸せになる“覚悟”があるかどうか。自分のキャリアプランとPlan・Do・Seeが向かうビジョンが重なるかを見ていって、最後は「ここで絶対幸せになる」っていう覚悟を見る。面接は4回ぐらいで決まってることが多いんですけど、最後の“覚悟”の部分をお互い納得するまで重ねているんです。──では、入る方は人生のビジョンが決まっていることが多いんですか?昔は会社の経営幹部になりうる人が入社すべきみたいな空気だったんですけど、今は時代も変わり、みんながみんなマネージャー目指さなくてもいいと思ってます。Plan・Do・Seeが本当に大好きで、働くメンバーが好きで、ここが提供してる商品が好きで、もっと会社をよくしたいと思ってる方が入社する場合が多いです。だからスキル採用も一切行ってないんです。レストランもソムリエ募集とかやったことないですし、ホテルも経験何年以上とかない。僕たちのエッセンスに当てはまりそうか、今は当てはまらなくても成長していくにつれて体現しそうか見ています。──採用にこだわっている分、離職率は低いですか?ホテル単体の数字は出ないですが、低いと思いますね。特に飲食部門は低いです。小さな成功体験をたくさん積ませる──採用を大切にしているのはとても伝わりました。採用後、気をつけていることはありますか?採用後に大事にしていることは、ちっちゃいことでもいいからとにかく成功体験をたくさん積ませること。特に中途のメンバーは今まで自分が所属してたコミュニティがあるので、新しいコミュニティに来ると緊張するだろうし、今までの職場のバイアスがかかってる場合がある。自分はこのコミュニティに所属していいんだって思ってもらえるように、承認される機会をたくさん与えます。仕事を長く続ける上でも重要ですし、モチベーションも変わってくる。──個人の成果に繋がるし、会社の離職率にも寄与するので大事ですよね。由喜門さんとしては、どういったマネジメントをしていますか?まずは、なるべく現場にいるようにしてます。もちろんマネージャーの大事な仕事の一つに、業績や店の価値を上げることがある。追うべき数字に責任を持つのがマネジャーだと思うんですけど、一方でそれを達成するにはやっぱりメンバーが必要です。メンバーのクオリティが高いことがホテルのクオリティになると思うので、現場にいてスタッフの成長を最大化させます。もう一つはスタッフの可能性を潰さないこと。この仕事はそのスタッフにとってまだ早いかなと思うことがあっても、とにかくやってもらいます。ミニバーの中身を変えるとか、チェックインの方法を変えるとか、間違えても戻せるものに関しては、戻せばいい。──個人の成長に対しては、どういった取り組みをしていますか?半期に一度行う目標設定と振り返りはとても大事にしています。一度立ち止まって、半期を振り返ってどうか、3年後や5年後どんなキャリアビジョンを描いているのか確認する。毎日チェックインばっかりやっていると、それに一生懸命になってしまって未来を考えなくなってしまう。新たに出来ることが増えると、やりたい世界も広がるはず。自分のなりたい姿を描くのはスキルだとおもうので、ある日突然すごいビジョンが描けることはないけど、20回描いたら初回よりかは良くなると思って、根気強く続けます。失敗を許容し、チャレンジを推奨する──働く環境や制度についてもお伺いできますか?基本的に8時間労働で、残業もほとんどないです。昔は1日で15時間勤務とかあったんですけど(笑)いまは同じ量の仕事を8時間で行うので、その分手際よくやらないと量が追いつかない。入社して最初はそこが大変かもしれないです。──逆にいうと、成長できる環境?そうですね。私個人のマネジメントとしても、人のキャパシティを広げるのは得意なので、仕事している最中は苦しくても気づいたら無敵になっていることは多いのかなと思います。──「働きがいのある会社ランキング」で評価されていたり、育休復帰率がすごく高かったりして、制度も整っている印象があります。制度としてはもちろんあるんですが、一度離れた方が戻りたいと思える環境なんだと思います。会社に対しての愛というか、ロイヤリティが高い方が多い。──その愛が生まれる理由を知りたいのですが、由喜門さんからしてこの会社で働いていて良かったなと思えることはどんなことがありますか?僕は入社してからミスしまくってるんですよ。ものすごい数の失敗をしている。失敗しても割と気前がよくて、むしろチャレンジしないことが良くないとされている。ミスしても努力していれば必ずチャンスは来ますし、トライできる環境はたくさんある。そういうのはすごくありがたかったですね。──失敗を許容し、挑戦できる環境が愛を生むんですね。最後に、どんな人と一緒に働きたいですか?Plan・Do・Seeの採用基準の一つでもある、明るく・元気で・素直な方です。誰でもできることなんですけど、出来ている人は少ないんですよ。文章・編集:田中拓海写真:田中拓海hoteltree(ホテルツリー)は、働きたいホテルが見つかる求人サイトです。宿泊業界の離職率は約30%。入社する理由と、続けられる理由は異なると考えています。続けられる理由まで考え、ホテル業界の取り組みや支配人の想いを紹介していきます。ミスマッチを減らすことを目的に、誠実なホテルと宿泊業を志す人々、それぞれに真摯に向き合っていきます。